「かっこいい曲」という指示が失敗する理由。動画制作を依頼する際に役立つ伝え方

「もう少し、シュッとしたカッコいい曲でお願いします」
「なんかイメージと違うんですよね……」
動画制作の現場において、BGM(音楽)の選定はクリエイターとの認識のズレが起きやすい工程の1つです。
「担当者である私のセンスが悪かった?」
「クリエイターの理解力が低い?」
と悩まれることもあるかと思います。
実は原因はもっと単純な「構造的な問題」にあります。
今回は、感覚に頼りがちなBGM選びからイメージ通りの曲を引き当てる確率を上げるための依頼テクニックを元バンドマンで映像クリエイターである私が解説します。
なぜ「かっこいい」は伝わらないのか?
映像クリエイターの多くは予算の関係上、作曲を依頼することはせずに、数万曲以上ある「音楽素材サイト(ストックサイト)」の中から、条件を絞り込んで曲を探しています。
ここで問題になるのが、サイトの検索システムは「形容詞」が苦手だという事実です。
私たちが普段使う「かっこいい」「おしゃれ」「いい感じ」という言葉は、人によって定義が異なります。
クリエイターがその曖昧な検索ワードで探そうとすると、数千曲がヒットしてしまい、最後は「たぶんこれだろう」という推測で選ばざるを得なくなります。
これが、選曲ミスの正体です。
この認識のズレをなくすためには、クリエイターが検索時に使っている「カテゴリー」を指定して依頼する必要があります。
選曲の認識のズレを減らす「2つのカテゴリー」
クリエイターが精度高く選曲するために必要な情報は、主に2つです。
1. ジャンル(方向性)
曲の骨格を決めるカテゴリーです。
例:
「ロック」「ヒップホップ」「ジャズ」「企業向け(Corporate)」など。
これが決まるだけで、対象は数万曲から数百曲まで一気に絞り込まれます。
2. テンポ / BPM(速さ)
映像の「リズム」を決める数値です。
心地よい動画は、音楽のビートに合わせて画面が切り替わります。「ゆったりした曲(BPM80)」と「疾走感のある曲(BPM130)」では、映像の編集テンポが根本的に変わってしまいます。
つまり、曖昧な言葉ではなく、
「ジャンルはヒップホップで、BPMは120くらいの疾走感ある曲」
と伝える。
これだけで、お互いの認識のズレは限りなくゼロになります。
音楽知識ゼロでもOK。AIとツールで言語化する時短テクニック
「理屈は分かったけれど、曲を聴いてジャンルやBPMなんて分からない」
そう思われる方も多いと思います。
そこで活用してほしいのが、以下の2つのツールです。
「Google AI Studio」
「YouTube BPM Analyzer」
これらを活用することでYouTubeにある「イメージに近い動画の音楽」さえ見つければ、誰でも簡単にロジカルな指示書を作成できます。
手順1:「Google AI Studio」で「ジャンル」を言語化する
例えば、自社動画の参考にしたい以下のYouTube動画を見つけたとします。
そこで、「Google AI Studio」に動画のURLを貼り付け、こう聞いてみてください。

以下のYouTubeリンクの楽曲について、分析してください。
[YoutubeのURL]
分析項目:
-推定される音楽ジャンル・スタイル
-曲の全体的な雰囲気やムード
またストックサイトで検索するワードを日本語と英語で教えてください。
プロンプト例
すると、AIは以下のように回答してくれます。
ご提示いただいた動画の楽曲に基づき、音楽的な特徴を分析しました。
この楽曲は、非常に現代的でトレンド感のあるスタイルが採用されています。
1. 推定される音楽ジャンル・スタイル
最も近いジャンルは 「Lo-fi Hip Hop(ローファイ・ヒップホップ)」 や 「Neo Soul(ネオ・ソウル)」 、あるいは 「Indie Pop(インディー・ポップ)」 の要素をミックスしたものです。リズム: ヒップホップ由来のヨレたような(レイドバックした)ビートですが、重すぎず軽快です。
楽器構成: 印象的なベースライン、乾いたドラムサウンド、エレピ(エレクトリックピアノ)のような柔らかいコード感が特徴です。
ボーカル: ラップと歌の中間のような、脱力感のあるメロディアスなスタイルです。
2. 曲の全体的な雰囲気やムードおしゃれ・スタイリッシュ: 洗練された雰囲気があり、ファッションやインテリアの映像によく合います。
コミカル・ユニーク: 音の隙間を生かしたアレンジや、効果音的な使い方が「ちょっとした動き(動画内のストップモーションなど)」にマッチしており、遊び心を感じさせます。
リラックス・日常感: テンポは速すぎず、休日の朝や午後のような「ゆったりとした時間」を演出しています。
グルーヴィー: 自然と体を揺らしたくなるような心地よいノリがあります。
ストックサイトでの検索ワード案
同様の雰囲気の楽曲を探す際に有効なキーワードです。
日本語(Japanese)ジャンル・雰囲気: ローファイ, チル, おしゃれ, ネオソウル, インディーポップ
用途・イメージ: VLOG, 日常, 料理, ファッション, ルームツアー, DIY
具体的特徴: グルーヴ, ベース, 脱力感, コミカル, ポップ
英語(English)Genre/Style: Lo-fi Hip Hop, Neo Soul, Chillhop, Indie Pop
Mood: Groovy, Quirky, Stylish, Laid back, Cozy, Upbeat (but chill)
Usage: Lifestyle, Fashion, Vlog, Tutorial, Commercial
検索のコツ:
もし「Artlist」や「Epidemic Sound」などの海外系サイトを使う場合は、“Quirky”(一風変わった、ユニークな) や “Groovy Bass” といったワードを組み合わせると、この動画のような「少しクセがあって耳に残るおしゃれな曲」が見つかりやすくなります。
回答例
これでジャンルはわかりましたが、補足として用途・イメージもクリエイターに伝えるとより良いです。
手順2:「YouTube BPM Analyzer」でBPMを測定する
「Google AI Studio」でもBPMを分析を指示できますが、あまり精度が良くなかったので「YouTube BPM Analyzer」をオススメします。
ただ「YouTube BPM Analyzer」も万能ではないので、「BPMカウンター」などで測定するのが確実です。(リズムに合わせてボタンをタップするだけ)
やり方としては「YouTube BPM Analyzer」にYoutubeのURLを貼って「Analyze(分析する)」を押すだけでBPMを出してくれます。

ここで一つだけ注意点があります。
音楽には「倍のテンポ(または半分のテンポ)」で解釈されるケースがあるため、今回の例であれば「182BPM(または91BPM)」と書き添えると良いです。
手順3:組み合わせて指示を出す
最後に、AIが出した「ジャンル」と、ツールが出した「BPM」を組み合わせてクリエイターに伝えます。
BGMは参考動画のようなイメージでお願いします。
[YoutubeのURL]
具体的には以下の通りです。
ジャンル・雰囲気:〇〇
用途・イメージ:〇〇
テンポ:BPM 〇〇前後()。
※BPMは解釈によって変わるため、半分の『〇〇』で検索しても参考動画同様のテンポ感の曲を検索できる可能性があります。
クリエイターへの依頼メール例
まとめ
BGM選びに必要なのは、センスではなく「検索しやすいキーワード」です。
「かっこいい(形容詞)」ではなく、
「ジャンル・BPM(明確なカテゴリー)」で伝える。
もし言葉に詰まったら、AIとツールに頼ってみる。
このひと手間を加えるだけで、BGMの選曲や修正のラリーは激減し、理想通りの音楽を使った動画が短期間で仕上がるようになります。
ぜひご依頼の際は試してみてください。
今、動画制作のご依頼を検討している中で、ヒアリングの際に選曲以外でなかなか汲み取ってもらえないなどお悩みがありましたら、ぜひお気軽にお問合せから私にご相談いただけますと幸いです。







